第5回東京湾勉強会を終わって

 第5回東京湾勉強会は,1999年12月11日(土)に,東京水産大学コンベンションルーム100Aで行われました(会場を22番教室から変更). 参加者は42名でした. 御記名いただいたうち約半分の方が懇親会にも出席されました. 今回は,時間の関係で,総合討論を行わず,質疑のみにしました. 懇親会ではこれからの勉強会をどの様にしていくかなど,活発に話し合われました.

 内容は,以下のように興味深いものでした.

石丸 隆(東京水産大学)東京湾研究でわかってきたこと
今までの東京湾研究の歴史を振り返り,現在までにわかった研究成果を紹介.
松山優治(東京水産大学)沿岸の急潮について
相模湾の急潮の研究史と,沿岸で起こる急潮が東京湾湾口でブロックされていて,東京湾内湾に波及しない.
松村 剛・石丸 隆・許 耀霖(東京水産大学)・今村正裕(電力中央研究所)栄養塩濃度の経年変動およびリンの溶出量の季節変動
1990年代における栄養塩(溶存態無機窒素・リン・珪素)を毎月実測し,経年変動を示した. 表層での硝酸とアンモニアの濃度がやや減少傾向にあった. 海底に堆積したリンは,夏季の海底の無酸素化の進行と共に溶出し,全リンに占める割合は4月の十数%から8月には50%以上になる. 9,10月には溶出したリンを含んだ貧酸素水塊が中層に浮上する.
許 耀霖・石丸 隆(東京水産大学)各態窒素の分布と湾内の窒素収支
湾内の溶存態無機窒素(DIN)・溶存体有機窒素(DON)・懸濁態有機窒素(PON)を湾奥から浦賀水道にかけて,1年間毎月各層で採取・実測した. DIN・PONは過去に多く調査されてきたが,DONに関する研究例がほとんどない. 調査の結果,DONは全窒素に占める割合が高く,内湾から浦賀水道にかけて水平的・鉛直的そして季節的にも安定して存在し,比較的均一に分布することが明らかになった. 各態窒素の結果を基に内湾の窒素収支をボックスモデルを用いて見積もった.
小川浩史(東京大学海洋研究所)東京湾における有機物の挙動
東京湾に分布する有機炭素の起源の区分を説明した. 東京湾でのプロジェクト研究(ECOMIC)や沿岸外洋域の実測値から,溶存態有機炭素(DOC)濃度が浦賀水道で低下する. 内湾での夏場のDOCの生産には橈脚類のスロッピーフィーディングがかなり寄与している. また,現地性のDOCと外洋起源のDOCを分ける試みを紹介.
野村英明(東京水産大学)炭素生物量から見た浮遊生態系の季節動態
珪藻や鞭毛藻などの植物プランクトン・従属栄養性バクテリア・鞭毛虫・微小・小・中・大型動物プランクトンそれぞれのグループあるいは種毎に炭素生物量を求めた. 1-3月の冬とそれ以外の季節では,生態系の構成者から考えられる食物網が,冬季には生食(古典的)食物網が,その他の季節は微生物中心の食物網に変化する.
石井晴人(東京水産大学)ミズクラゲの生物量・分布・パッチネス
ミズクラゲを目視によって定量したところ,ネットと比べ生物量は1オーダー以上多くなった. ミズクラゲの餌は7-11月には小型橈脚類 Oithona davisae で,10月には餌の95%以上になる. 現存量から計算された摂餌圧を O. davisae の生物量にはかるとエサが足りないことから,ミズクラゲの餌源として別の生物も考えていかなければならない. ミズクラゲのパッチ内密度は,1 m3 あたり最高94個体に達する.
風呂田利夫(木下今日子に代わり,東邦大学)東京湾のアナジャコの生態
東京湾湾奥部新浜湖干潟部でのアナジャコの生態に関して紹介. 特にアナジャコの作る巣穴の深さに着目した.2 m以上もあるような巣穴(推定では最高5 m)をなぜ掘る必要があるのかが今後の興味深い課題.
風呂田利夫(東邦大学)東京湾におけるウミニナの絶滅危惧と保全策
絶滅種の共通点は幼生期に浮遊生活をおくることであった. ウミニナの棲む環境として,親の生活する干潟のみを保全するのではなく,着底する地先沖合の海底が,環境的に悪化した為,干潟部に戻る前に死滅しているのではないか.
 今回の勉強会は,いずれも新しい内容の研究が紹介され,非常に興味深いものでした.一方で,内容が濃い分専門的になり,分野を横断する形での討議がしづらかったことも否めません.次回は,原因はわからないけれどもなにか新しい現象を捕まえているのではないか,自分一人では解釈できないこと,あるいは学部生・大学院生の研究,各水試の方々から水産的な話題を戴くなど,本来の「東京湾をみんなで勉強する会」にしていこうと思います.なお,次回の東京湾勉強会は,2000年11-12月辺りに行われる予定の第3回東京湾海洋環境シンポジウムの前後に行う予定です.
 今回,御講演いただいた方々,遠方より参加された方々に感謝いたします.
 これからもよろしくお願いします.

                             世話人一同