K. 舟状海盆(しゅうじょうかいぼん、Trough)

海底の細長い窪みで、平坦な底と急峻な斜面を特徴とし、通常、海溝より浅いもの。トラフともいう。



K1. 小笠原(おがさわら)舟状海盆 (図VII-1,図VII-2)

28°N、141°30′E。水深2,600-4,100m。80km×550km。小笠原海嶺と七島・硫黄島海嶺(南部)に囲まれる伊豆・小笠原弧の前弧海盆。海底は平坦であるにもかかわらず、堆積物の分布は変化に富む。舟状海盆の西側には、七島・硫黄島海嶺から火山砕屑物が流れ込んでいる。最上部マントルの速度は、7.8-7.9km/sec。モホ面の深さは海面から17kmである。[海6726]



K2. 隠岐(おき)舟状海盆 (図IV-4,図VI-1,図VI-7)

37°N、135°30′E。水深1,000-1,700m。180km×40km。隠岐海嶺(隠岐堆)と山陰沖縁辺台地とに挟まれた海盆。隠岐海嶺からの比深は700-1,200m。[海6401、6402]



K3. 沖縄(おきなわ)舟状海盆 (図I,図II,図V-1,図V-2)

東シナ海の大陸棚と南西諸島海嶺の間にある窪地で琉球弧の背弧海盆である。更新世以降に形成された。舟状海盆の海底は南部で沈降が進み、北部の男女海盆の600-800mから、南部の2,000m以深へと深くなる。北部の平坦な海底の各所には島、海丘などの浅所がある。一方、中・南部の海盆の中軸部には中央地溝帯が形成されその中央の裂け目に岩体が貫入して中央海山・海丘をつくっている。舟状海盆内の南奄西海丘、伊平屋海丘群、伊是名海穴などには熱水活動がみられる。[海6302]



K4. 北大和(きたやまと)舟状海盆 (図VI-1,図VI-6)

39°15′N、134°E。水深2,000m。100km×20km。日本海大和海嶺上の北大和堆と大和堆を分ける比深1,000m以上の地溝。海盆の堆積物は、大和海嶺頂部が後期鮮新世-第四紀(0.7-2.4Ma)に侵食を受けたことを示す。[G5.06]



K5. 熊野(くまの)舟状海盆 (図IV-4,図VI-7)

33°30′N、136°30′E。水深1,200-2,000m。190km×30-50km。南海舟状海盆の外縁隆起帯と大陸棚(御前埼-潮岬沖)の間に形成された堆積性海盆。しかし、東半分は起伏に富む。大陸棚外縁及び陸棚斜面を刻む安乗口海底谷、尾鷲海底谷以外にも、陸棚斜面を浅く刻むおびただしい数の必従谷が発達しており、これらが舟状海盆に土砂をもち込んでいる。[海6635、6602]



K6. 相模(さがみ)舟状海盆 (図III-1,図IV-2,図IV-3,図VI-3,図VII-1)

相模トラフと呼ばれることが多い。相模湾に発し、房総半島・大島間を抜け、3つのプレート境界である海溝三重点(坂東深海盆)にいたる。相模舟状海盆は、フィリピン海プレートとユーラシアプレート(東北日本マイクロプレート)の境界でもある。元禄大地震(1703)、関東大地震(1923)など巨大地震の発生域である。トラフには東京海底谷、鴨川海底谷など多くの海底谷が流入している。[海6640、6603]



K7. 後志(しりべし)舟状海盆 (図VI-1,図VI-3)

43°N、139°30′E。水深3,200-3,300m。20km×90km。奥尻海嶺と平行にその陸側にできた海盆。[海6657、6658]



K8. 駿河(するが)舟状海盆 (図IV-4,図IV-5,図VI-3,図VII-1)

34°30′N、138°35′E。水深1,000-3,000m。2-10km×80km。駿河湾をほぼ北から南に抜ける峡谷状の海盆。フィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界であり、沈み込もうとする伊豆半島側の大陸棚が深く、対岸の西側の大陸棚が浅い。1854年の安政東海地震はこの境界を含めた地域で起きている。[海6602]



K9. 孀婦(そうふ)舟状海盆 (図VII-1,図VII-2)

29°N、139°15′E。水深2,200-3,200m。30km×230km。七島・硫黄島海嶺(中部)の西方にある伊豆・小笠原弧の背弧海盆のひとつ。島弧の方向に対してやや斜行する。[海6725]



K10. チヌーク舟状海盆 (図I,図II)

41.5°-45.5°N、166°W-175°Eにかけて、幅50-200kmで、東北東-西南西方向に全長1,200km以上。西端は天皇舟状海盆で限られる。水深は6,000mより深い。舟状海盆内には平行して海嶺がみられるところもある。[G5.07]



K11. 対馬(つしま)舟状海盆 (図VI-2)

34°30′N、129°10′E。水深140-220m。幅8km。長さ120km。対馬海峡西水道にある。孤立した深所が3地点ある。[海6345]



K12. 天売(てうり)舟状海盆 (図VI-1,図VI-3)

44°N、141°05′E。水深200-300m。15km×80km。北海道日本海側大陸棚と小樽堆とに挟まれた規模の小さい海盆で、水深も浅い。[海6311]



K13. 天皇(てんのう)舟状海盆 (図I,図II)

北太平洋天皇海山列東方の37°-48°Nに位置する全長1,800km、幅20-40kmの細長い断裂帯状の凹地。水深5,500-7,000m。大洋底の水深5,800mからの比深1,500m以上に達する深所もある。また、溝を縁とるような土手の高まり(高さ1,500m以上のところもある)もみられる。[G5.06、5.07]



K14. 富山(とやま)舟状海盆 (図VI-1,図VI-3,図VI-4,図VI-5,図VI-7)

38°N、138°E。水深1,000-2,000m。20-45km×230km。東北日本と西南日本を境する位置にあり、富山湾から白山瀬(堆)東方までの南北に長い海盆である。舟状海盆内には、富山深海長谷が自然堤防、扇状地など堆積地形をつくっている。舟状海盆を挟んだ東西では構造運動の違いがある。東北日本沿岸部では、後期鮮新世以降の地層が激しく構造運動を受けて、地形が地塊化して複雑になっているのに対して、西南日本沿岸部では、構造運動は相対的に弱く、そこには東北日本沿岸沖では見られない縁辺台地が発達した。富山舟状海盆は、鮮新世のはじめ頃(5-6Ma)から沈降を開始しているが、南部の沈降は鮮新世末頃(2Ma)からである。[海6662、6312]



K15. 南海(なんかい)舟状海盆 (図I,図II,図IV-4,図IV-5,図V-1,図VI-7,図VII-1)

南海トラフとも呼ばれる。伊豆半島石廊埼南南西沖の水深3,500mから四国足摺岬南方の水深4,900mに達する底の浅い海盆で、全長650km。フィリピン海プレートとユーラシアプレートが、年間4-5cmという相対的に遅い速度で収斂する境界である。南海舟状海盆への四国海盆の沈み込みは後期鮮新世に始まった。陸側斜面には、舟状海盆の形成以来、舟状海盆底に持ち込まれる堆積物が、フィリピン海プレート上の堆積物とともに押し付けられて生じた付加体が発達している。そのために、この地帯は規模の小さな尾根(リッジ)と溝(トラフ)が繰り返す複雑な地形区で、ridge and trough zoneと呼ばれる。遠州灘沖では、ひとつのリッジやトラフは長さ10-20km、幅数kmで、隣り合うリッジとトラフの比高は50-250mである。舟状海盆底の充填堆積物には、圧縮による小起伏がみられるほか、堆積物の流路として東から西へ流れるチャネルもみられる。南海舟状海盆海域を震源とする大地震は、白鳳時代(684年)以降8回の記録がある。[海6314、6302]



K16. 西七島(にししちとう)舟状海盆 (図VII-1)

33°N、139°E。水深1,500-1,800m。20km×90km。七島・硫黄島海嶺(北部)と西七島海嶺に挟まれる背弧海盆のひとつ。[海6364、6421]



K17. 西之島(にしのしま)舟状海盆 (図VII-1,図VII-2)

27°30′N、140°E。水深2,600-3,800m。幅15km-85km。長さ280km。伊豆・小笠原島弧の背弧海盆のひとつで、西之島の西方にある。舟状海盆の北・中部では島弧に斜行する。[海6302]



K18. ニューカレドニア舟状海盆 (図I)

南西太平洋ニューカレドニア島南からニュージーランド北島の北西に至る全長2,600km。水深2,000m-3,500mで北部の方が深い。[G5.10]



K19. パラワン舟状海盆 (図I)

南シナ海のパラワン島及びカリマンタン島とナンシャー(南沙)諸島に挟まれる細長い海盆。水深2,500m-3,000m。幅80km、全長670km。[G5.06]



K20. 日高(ひだか)舟状海盆 (図III-1)

42°N、142°E。水深500-1,500m。100km×150km。津軽海峡の東方。海盆の南側は、千島・カムチャツカ海溝と日本海溝の会合部方向に開いている。[海6311]



K21. マリアナ舟状海盆 (図I,図II,図VII-1)

北西太平洋のサイパン島、グァム島などを頂く東マリアナ海嶺の背後にあり、西側は西マリアナ海嶺に限られる三日月状の背弧海盆。南北に1,400km、最大幅230km。舟状海盆の中央には幅10-15kmの中軸谷がみられる。谷底からの高さ1,000mほどの尾根状の高まりにかこまれる。中軸谷には広く活発な熱水噴出がみられ、噴出孔の周囲にはここでも熱水に含まれる硫黄、メタンなどに依存する生物群集がみられる。海盆の誕生は中新世最末期(5Ma)に始まり、現在も拡大中(15-17mm/年)である。[G5.06]



K22. ムーサウ舟状海盆 (図II)

東カロリン海盆の東縁にある細長い溝地形で南北に幅55km、長さ390km。水深6,500-7,100m。海溝と呼ばれてもよい地形。海盆の東側には平行して海膨状の地形(水深1,300m-4,000m)が並走している。[G5.06、5.10]



K23. 室戸(むろと)舟状海盆 (図IV-4,図VI-7)

33°20′N、135°E。水深1,000-1,600m。125km×25km。紀伊水道の入り口の四国・紀伊半島と南海舟状海盆の外縁隆起帯(土佐碆とその東方の隆起帯)との間にできた海盆。ほぼ東西に伸びる長さ130kmの向斜構造のなかにある。厚さ1-1.5秒以上の第四系に埋められている。土佐碆の隆起につれ堆積の中心は北へと移動している。[海6602]



K24. 最上(もがみ)舟状海盆 (図VI-1,図VI-3)

39°N、139°E。水深600-3,000m。10-40km×280km。佐渡北方の諸堆列(佐渡海嶺)と東北日本海沿岸大陸棚とに挟まれた海盆。北端は日本海盆に開いている。海盆のほぼ中央を最上深海長谷が流れる。平坦な海底ではこれを浅く刻み、深度差があるところでは深く刻む。[海6660、6312]



K25. 利尻(りしり)舟状海盆 (図VI-1,図VI-3)

45°30′N、140°45′E。水深350-750m。15km×90km。礼文島とその西方の礼文堆を東西に分ける海盆。利尻舟状海盆の南方には天売舟状海盆がある。[海6311]